『MMTとは何か』レビュー
島倉原(@sima9ra)さんの著書『MMTとは何か』を読み終わりました。
MMTについてそこまで理解が深くなかったので、この本を通して少し理解が深まったかなと思います。本気で理解するのであれば、金ピカ本を読んだ方がいいと思うのですが、そこまでは気持ちが乗りません(笑)
過去にも『MMTとは何か』から書いた記事があります。
私がMMTで一番重要だと考えているのは、
日本や米国のように「通貨主権」を有する政府は、自国通貨建てで支出する能力に制約はなく、デフォルトを強いられるリスクもない。財政赤字や国債残高を気にするのは無意味である。
という主張です。
財務省も似たような見解を出していまして、これは事実なんであろうと思います。
そしてその事実を下支えするのが、貨幣観です。主流派経済学とMMTの決定的な違いは貨幣に対する認識です。MMT批判でMMTの政策部分に焦点を当てている方は結構いるんですが、貨幣観に対して批判している人は見たことがありません(知っている方いましたら教えてください)。
日本は20年以上デフレが続いていますから主流派経済学から考えても減税&財政出動が必要なのですが、財政破綻論が蔓延していますので増税&政府支出削減という真逆の方に走っています。
ここを打破するためにもMMTが主張している「「通貨主権」を有する政府は、自国通貨建てで支出する能力に制約はなく、デフォルトを強いられるリスクもない。」というのがより一層取り上げられるようになったのだと思います。
MMTの政策として目新しい点はJGP(雇用保障プログラム)であると思います。失業者は全て政府が最低賃金以上で雇うというものです。これによって失業率は下がり社会が安定し、国家としての供給能力も最大の状態に近づけることができます。さらに景気が良くなれば失業者が減り政府支出が削減、景気が悪くなれば失業者が増え政府支出が拡大するといったように景気安定化としての役割もあります。
問題点は、実証例がない、本当にそんなに上手くいくのかという点です。現在のような経済ショックの時には政府が雇用を拡大する動きというのは過去何度か見られているのですが、景気が良くなればその雇用制度というのは終わっているものが多いです。あくまで不況時限定の臨時の雇用制度となっているわけです。
さらには、高賃金で失業した人に対してそれに見合った仕事を用意できるのか?公共サービスの供給能力が景気の変動によって変化してしまうことで支障は出ないのか?といった問題もあるようです。
MMTがJGPを主張するのは景気が落ち込めば減税&財政出動、景気が良くなれば増税&政府支出削減といった裁量的財政政策に否定的であることがあげられます。理由としては景気が変動したタイミングと政策を打つまでのタイムラグが生じてしまうからです。そのタイムラグが大きければ大きいほど経済に対するダメージは大きくなってしまいます。
日本でも現金10万円の給付を決定するのにも時間がかかっていますし、実際に給付される役所仕事にも時間がかかっています。消費税減税に関してもダラダラとしていて経済へのダメージは大きくなるばかりです(日本の場合は緊縮財政&財政破綻論が邪魔している点が大きいですが)。
以上、『MMTとは何か』から学んだことをまとめさせてもらいました。もっと詳しく知りたいという方はぜひ、本を手に取って読んでいただけたらと思います。
MMTに対する正しい理解が進むことを祈ります。
こちらが金ピカ本。