財政支出を賄う必要はない&トリクルダウンという嘘
本日はこちらの記事。
「1人10万円」の定額給付金の使い道に関する家族会議――。その場での自らの発言を後で振り返って、筆者はコロナ禍が「中間層の没落」を加速するだろうということに思い至った。その理由を解説しよう。(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)
「中間層の没落」について書かれているのですが、あまりにもお粗末でしたのでツッコミを入れさせていただこうと思います。
増税が必要になる?
家庭内で40万円の使い道について議論中、筆者はこのような発言。
「このお金を受け取って使うことには、何らやましいところはない。なぜなら、父ちゃんはこの40万円に対して、正確には分からないけれども、たぶん、2倍か3倍くらいの負担をするはずだからだ。負担の形は、将来の税金であるかもしれないし、インフレであるかもしれない」
何を言っているんだ…。
典型的な財政破綻論者と同じ主張ですね。「政府が支出した分は税金によって賄わなければならない」という発想。この発想のせいで日本経済が20年も衰退し続けて国民の生活水準は下がって「中間層の没落」が起きたと思いますが、そのような考えは全くないようです。
資産が目減りするからインフレを負担と考えるのもお粗末で、インフレになれば筆者の所得も幾分か上昇するでしょうし、このままインフレにならなければ筆者の大事な息子さんや娘さんが生活する将来の日本がどんどんと没落していってしまうのではないでしょうか。
トリクルダウンという嘘
アベノミクスについてはこのように述べています。
(1)金融緩和で円安になり、財の輸出が有利になるとともに、賃金水準の低下が起こり、労働への需要が起こる。当初、「勤労者」の実質所得は低下する
(2)失業率が低下する。限界的な(失業していたり、失業しそうだったりした)労働者が助かる
(3)同時に株式や不動産などの資産価格が上昇し、資産を持つ富裕層は資産の値上がりを享受できる
(4)望ましいインフレ率を達成し、実質金利が低下して経済活動が拡大すると、やがて「勤労者」の所得向上にもお金が回るようになる(「トリクルダウン」)
「トリクルダウン」という理論がそもそも間違っているんですよ。
デフレ&グローバリズム推進の日本で利益を得た企業が日本に投資をするわけがないんですよね。企業が得た利益はほとんどが外国人の投資家に配当金という形で流れていってしまっているのが現状です。
2012年には15兆円に届かないくらいであった配当金が2018年には25兆円を超えています。
法人税の減税によって企業の利益を拡大。そのお金は残念ながら投資家に回っていくという仕組みになっています。さらに法人税減税分の税収は消費税として穴埋めされ、私たちの生活はどんどんと負担を強いられています。
トリクルダウンはあり得ない | 三橋貴明オフィシャルブログ「新世紀のビッグブラザーへ blog」Powered by Ameba
中間層の破壊
中間層の破壊については2種類述べています。
1つは、典型的には観光業や飲食業、さらにコロナによって需要が減少する製品を持つ幾つかの業種にあって、安定して雇用されていた正社員が失業する形での影響だ。
これには私も同意します。対策としては政府が大胆な財政出動によって粗利補償、現金給付、消費税ゼロといった政策をうってとにかく企業が倒産しないように、人件費削減という選択肢を選ばないように支援。すでに職を失ってしまった人の消費に対する負担を軽減する。やりようはいくらでもあります。
もう1つの「中間層破壊効果」は次のように起こる。
コロナ対策として、まず(1)困窮者救済のための財政支出+金融緩和が行われ、次に、(2)増税ないしインフレ、または2つの組み合わせで(1)のコストが賄われると考えられる。
政府の財政支出をコストとみなして賄うべきであるという考え方がここでも披露されています。しかもそれが自明かのように述べられているのがまた悲しいです。
増税といっても消費税の増税であれば、低所得者ほど負担が大きくなるので中間層の没落に繋がるとも思えません。
まとめ
私がインデックス投資について学んでいる時にこの方の記事を何度か読んだことがあります。そこでは正しいことを言っていたのですが、経済のことはあまり詳しくないというのが少し残念です。
経済評論家と名の付く人でもこのような考えを持っているのですから、積極財政に転換するのは先が長そうですね。
財政支出を賄わなければいけないという発想から抜け出せることを祈ります。