Salvation~世を治め民を救う~

読書感想文を主に書いています。政治・経済やメンタルなど健康に関するもの、小説などを取り上げることが多いです。

オンライン教育が進まないのは教員のやる気の問題ではない

本日はこちらのニュース。

 

toyokeizai.net

 

新型コロナウイルスの感染拡大で、世界の多くの国が一斉にオンライン教育を導入しました。ところが、日本では基礎教育段階のオンライン教育は、公立校では進展していません。他方、私立校の取り組みは早く、格差が広がっています。 

 

日本ではなかなかオンライン教育が浸透してないよねーという記事。

この記事で述べられている見解と私の見解を述べていこうと思います。

 

 教員のやる気が足りない

筆者は記事内でオンライン教育が進まない原因をこのように述べています。

 

「教員にノウハウがない」と言うのですが、オンライン教育は「ノウハウが必要」というように技術的に高度なものではありません。

要はやる気があるかどうか、熱意があるかどうかです。 

 

ちょっと面喰ってしまう結論でした。やる気なんていう抽象的なことに原因を絞ってしまっていいのでしょうか。 もし本気でそう思っているのであれば、「なぜ日本の教員はやる気がないのか?」「日本の教員がやる気を出すにはどうしたらいいのか?」を議論して欲しいものです。

 

 日本の教員は働き過ぎている

私は日本でオンライン教育が進まないのは教師のやる気が原因ではなく、教師の働き過ぎに原因があると思います。

 

TALIS(OECD国際教員指導環境調査)というのが2008年から実施されています。日本は2013年から調査に参加。2018年も継続して参加しています。中学校の教員調査が主なようです。こちらの調査を参考に日本の教員の労働環境についてみていこうと思います。

 

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OECD国際教員指導環境調査(TALIS)2018報告書より



48か国がこの調査に参加しているんですが圧倒的に日本の教員の労働時間が多いのが分かると思います。

 

ただこのデータを読み解くには注意点があります。1つは、非常勤講師と常勤講師が分けられていない点。非常勤講師が多い国では労働時間は少なくなる傾向にあります。もう一つは主観を基にしたデータであるという点。個人の記憶に頼っているわけですから労働時間がどこまで正確かは不明です。

 

とはいえ、教員の過労死は度々報道されていますし、教員はブラックだという意見も多々ありますので、やはり日本の教員は世界と比べてみても働き過ぎているといえるのではないでしょうか。

 

 オンライン教育に移行する余力がない

日本の教員の労働時間が世界平均よりも大幅に多いことから考えられるのは、教員の方々がオンライン教育へと移行するための業務を行う時間がないということではないでしょうか。

 

ある程度平時から余裕があれば、非常時にも素早く対応することが出来ると思うのですが、平時ですらカツカツの教育現場で非常時にオンラインへとスムーズに移行しろというのはあまりにも無理難題ではないかと思います。

 

 自己責任論で語っていては問題は解決しない

教員のやる気という個人の問題に矮小化して、教育現場の労働問題に目を向けないのはよろしくないと思います。組織としての問題を個人の問題にすり替え、組織として負うべき責任を個人に押し付けてしまっているのではないでしょうか。自己責任論がここでも見受けられるように思います。

 

 まとめ

至る所で自己責任論が蔓延しているのを感じます。個人には限界がありますから、こういう大きな問題は組織として何か不備があるのではないか、と考える方が建設的なように思います。

 

教員の労働環境が改善されることを祈ります。