Salvation~世を治め民を救う~

読書感想文を主に書いています。政治・経済やメンタルなど健康に関するもの、小説などを取り上げることが多いです。

コロナで示したグローバリズムの限界と政府の重要性

本日はこちらの記事。

 

globe.asahi.com

 

新型コロナウイルスの感染拡大によって大きく落ち込んだ世界経済は、この後どうなっていくのか。グローバル化や金融市場の自由化を背景に深刻化した格差の構造は、コロナによって加速してしまうのか。ノーベル経済学賞受賞の経済学者、ジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授(77)が、オンラインでのインタビューで語った「コロナ後の世界」とは。(聞き手・星野眞三雄) 

 

いつもはニュースや記事を引用して批判することが多いのですが、今回は「コロナ後の世界」について真っ当な主張をしているジョセフ・スティグリッツ氏のインタビューを紹介します。

 

各国政府の対応によって未来が決まる

新型コロナウイルスの感染拡大による経済への影響についてこのように述べています。

 

経済は弱まっていくとみられるが、政府の支援の規模や持続性などによって、どれほど弱まるかが決まってくる。影響は国によって大きく異なるということだ。米国などいくつかの国は不十分な対応しかしていない。米国は巨額の支出をしているが、必要なところに行き渡っていない。失業者は急増している。IMFの予想は現実的なところだろうが、世界経済はもっと悪くなる可能性もある。 

 

政府の支援の規模や持続性が重要と述べています。米国では日本に比べ多額の財政支出を行っていますが、必要なところへは届いていないそうです。

 

コロナショックを乗り越えるには政府の支援というものが必須なのですが、日本では支援するといっても少額で短期間のものが多いです。国民の生活や命を守るべきなのですが、それが現状実行できていません。

 

グローバリズム推進に伴う格差拡大は世界中で見られています。格差の拡大が今回のような有事に際して貧困層ほど大きな影響を受けるようになっています。

 

上層の人間はオンラインで仕事を続けられるが、最下層の人間は、より人との接触の多い仕事や、機械やロボットで代替できる仕事が多い。技術を持たない労働者の需要は減り、失業者の増加や賃金の低下が起こる。つまり、不平等・不公平の状況は悪化する。さらに今回のような大きなショックが起きたときはいつも、より教育された、より適応能力の高い人は柔軟に対応できる一方、教育を受けていない人たちは圧力にさらされる。

 

日本でも格差拡大は進んでおり、特に派遣労働者非正規労働者は真っ先に首を切られることになりますし、何か月も働かずに暮らせる所得も少ないでしょうから、生活が立ち行かなくなってしまいます。

 

「余裕」を「ムダ」と叫んで排除してきた

今回のパンデミックにより、ヒト、モノ、カネの移動の自由を推進してきたグローバリズム脆弱性が露わになりました。グローバリズムによって政府の力もよわまってしまいました。

 

行き過ぎたグローバル化と金融自由化が、政府と市場の間のバランスを失わせたということだ。金融の規制緩和をしすぎたが、市場には政府が必要だ。グローバル化で、ふつうの市民ではなく企業によって世界的なゲームのルールが決められた。その結果、適切な時期にフェースシールドや人工呼吸器がつくられず、不足する事態を招いた。

 

市場経済には復元力がなかったのだ。短期利益に集中し、長期安定性に注意を払ってこなかった。分かりやすくするためにこんなたとえ話をするが、多くの会社がわずかなお金を節約するために自動車からスペアタイヤを取り外した。ほとんどのときはスペアタイヤは必要ないが、タイヤがパンクしたときには必要だ。我々はスペアタイヤのない車、復元力のない経済をつくってしまっていたのだ。

 

日本でも「ムダ」というレッテル貼りによって多くの「余裕」が失われてしまいました。保健所の数を減らし、病院のベット数を減らし、結果どうなったのか?保健所はパンクし、感染者が増えればすぐに医療崩壊が危ぶまれている現状です。なんでもかんでも民営化、自由化、市場競争に任せるような経済の在り方を見直すべき時に来ています。

 

財政赤字ベーシックインカム

日本では国民を救うために財政赤字を拡大しようとしても「将来世代にツケを残すのかー!」といって、救える命を放棄させる人たちが多いです。財政赤字についてはこのように述べています。

 

戦争のさなかにある国が「お金がない」と言っている場合ではない。やるべきことをやるべきだ。私は財政赤字を心配していない。第2次世界大戦で各国政府は大きな借金を抱えたが、経済成長を遂げ、国内総生産(GDP)比は下がった。

 

コロナを戦争に例えて、戦時下に「お金がない」などという国はないと述べています。日本ではお金がないから国民から集めようという動き(増税への議論)が見られますが、国民を守る国家の姿とは程遠い動きではないでしょうか…。

 

ベーシックインカムについてはこのように述べています。

 

政府の最も重要な義務は、国民に仕事を提供することだ。仕事を求めているすべての人に、尊厳ある仕事がある。グリーン社会に移行するために必要なインフラはある。ベーシックインカムはその最も重要な義務から注意をそらさせる。問題は、コロナ禍の中で仕事がなくなり消費しなくなったことだ。そのため、いくつかの国がベーシックインカムと同様の政策をとった。失業した人、もしくはすべての人にお金を配るのは、例外的な時期だからだ。感染拡大を制御可能にするまでのサバイバルといえる。

 

「政府の最も重要な義務は、国民に仕事を提供することだ。」この考えはMMTにも通ずるものがあります。平時は政府が国民に対して仕事を提供することが必須といえます。しかし、現在は仕事することが感染拡大につながってしまいますから、仕事をしなくても生き延びる方法としてベーシックインカム的な政策が重要性を増しています。

 

 

まとめ

最後にはこのように述べています。

 

私たちは、金融市場と資本主義の本質を変えなければならないということを悟った。一方で、政府が強力な役割を果たす市場経済を実現できると私は信じている。資本主義を放棄するのではなく、進歩させる、改革することが必要なのだ。 

 

おそらくこのコロナ禍後の世界では政府が市場に介入することで安定化をはかる方向へと進んでいくと思います。具体的には利益を目的とすべきでない生活インフラは政府が管理すべきと思います。日本は民営化の方向へと今も舵を切り続けていますが、このままでは私たちの生活水準はどんどんと下がっていくと思います。

 

コロナ後の世界が皆にとって豊かなものとなることを祈ります。