Salvation~世を治め民を救う~

読書感想文を主に書いています。政治・経済やメンタルなど健康に関するもの、小説などを取り上げることが多いです。

経済において大切な「供給能力」の話

本日は「供給能力」について述べようと思います。

 

経済を語るうえで欠かせないのが「供給能力」です。供給能力は「財やサービスを生産する力」とも言いかえることが出来ると思います。供給能力が失われることがどれほど恐ろしいことなのかがあまり知られていないと思いますので、まとめてみようと思います。

 

デフレは供給能力の破壊

日本は97年をピークに実質賃金が下がり続け、GDPは横ばい。先進国の中でそんな国はありませんので、日本人は確実に貧困化しています。

 

デフレとは需要に対して、供給能力が上回っている状態です。つまり、生産したとしても買い手がいない状態。なので、企業としては、生産性向上のための投資は行わず、供給能力をどんどんと下げていくことになります。具体的には工場の閉鎖や店舗の閉鎖などです。

 

供給能力が破壊されるとどうなるのか

供給能力が下がってしまうと、国内で財やサービスを生産する力が下がってしまいます。そうなれば、輸入に頼らざるを得なくなります。

 

平時は輸入に頼っていてもいいのかもしれませんが、コロナ禍のような非常時には一気に問題が噴出します。今回のマスクの騒動が分かりやすい例と思います。今でこそマスクが流通していますが、中国からの輸入が途絶えてしまった当初はマスクがなかなか手に入らないような状況が続いていました。

 

それでもまだよかったのは日本がマスクを生産する力を持っていたことです。マスクを輸入していたのは日本で作ることが出来ないからではなく、中国の方が安く仕入れることが出来たからにすぎません。

 

しかし、マスクを生産する力が自国になく輸入に頼るしかない状況であればどうだったでしょうか。おそらく、中国からの輸入が再開されるまでは、入手できない状況が続いていたと思います。そうなればコロナの被害はもっと大きくなっていたかもしれませんし、国民の不安も大きくなっていたでしょう。

 

マスクよりももっと怖いのが食料です。当たり前ですが人間は、食料なしでは生きていくことが出来ません。食料安全保障という言葉があるくらい食料をしっかりと確保することが出来るかどうかは国家として大切になってきます。

 

アメリカでは農家に対して国家が多くの補助金を出すことで、安定的に食料生産が出来るように支援しています。日本は農業の規制緩和を続け、ビジネスの土壌として海外に日本の農業を売り渡している状況が続いてしまっています。食料自給率が下がっていき、自国で生産する力が落ちていけば、こういった非常時にお金のある人にしか安全な食料が行き渡らないというような事態に陥る可能性もあります。

 

供給能力を維持するにはどうしたらいいか

多くの先進国はコロナによる経済的なダメージが大きく、需要が大きく落ち込んでいる状況です。しかし、そのまま放置してしまうと需要に合わせて大事な供給能力も落ちていってしまいます。その対策として多くの政府が大規模な財政出動を行っています。

 

需要がないというのはすなわちお金がないともいえます。「若者の車離れ」といった言葉もありますが、価値観が変化したというよりも、実質賃金の下落によって車を買うお金がない、もったいないという若者が増えたことが一番大きな要因ではないでしょうか。

 

政府は財政出動によって減税や現金給付を行い、需要を生み出そうとしているのです。

 

財政出動に反対する人間の恐ろしさ

それに対して、「これ以上財政赤字を増やしたら財政が破綻する」「ハイパーインフレになってしまう」「将来世代にツケが残る」といった批判を展開し、財政出動を抑制しようとする学者や政治家の方がいます。

 

国家にとって何よりも大切なのは「国民の生活を守ること」「国民の生活を豊かにすること」であると私は考えています。そしてそのためには供給能力が大きな鍵を握っています。自国の供給能力の高さが非常時の国家の強靭性にも繋がります。需要が激減しており、供給能力の破壊が進んでいる今、需要の穴埋めのための財政出動を拒むような学者、政治家は私たちの生活を守ること、豊かにすることを放棄しているのと変わりません。本人たちにはその自覚がないでしょうが。

 

供給能力を守ることが私たちの生活を守ることに繋がり、供給能力を増やすことが私たちの生活を豊かにすることに繋がるのではないでしょうか。

 

供給能力が破壊されないことを祈ります。