中小企業経営者の能力が低いからデフレ脱却できないのか?
本日はこちらの記事。
2度目の登場、D・アトキンソン氏の記事です。前回の記事はこちら。
それでは中身を見ていきましょう。
デフレによる実質賃金の低下と供給能力破壊
バブル崩壊以降、日本は長らくデフレに苦しんできました。安倍内閣はデフレ脱却を掲げて大胆な金融緩和政策を続けてきましたが、第2次内閣発足から7年半が経過した現在でも2%のインフレ目標を達成できていません。消費者物価指数を見ると、アベノミクスで物価はやや上がっているものの、長期的にはいまだ「失われたウン十年」の霧の中にいます(図①)。
グラフを見れば一目瞭然で97年をピークに消費者物価指数は下降しています。97年は橋本政権が消費税増税にはじまる緊縮財政を大々的に行った年でした。
物価が下がれば財布から出ていくお金が減って、生活が楽になりそうな気もしますが、実際には企業の売り上げが下がり、そこで働いている人の給料が下がり、生活に余裕が出てくるどころがどんどんと生活は苦しくなっていきます。
さらには、モノやサービスが売れないので企業は投資を行わず、供給能力もどんどんと破壊されていき、自国でモノやサービスを作ることが出来ず、輸入に頼ることとなり経済がどんどんと不安定になっていきます。
今回のコロナ禍でも分かる通り、マスク一つとっても自国で生産しているか他国に依存しているかで国民の安全や不安というのは大きく変わります。日本では自然災害も多いですから供給能力には余裕を持たせて非常時に備えておく必要があります。
ということで私たちの生活、命を守ってくれる大事な供給能力を破壊していってしまうので物価が伸びない状態やデフレ状態というのは、きわめて危険な状態です。
政府の財政出動を提言するべきなのだが…
日本政府はそれを長らく放置してきました。供給能力が余っているということは需要が足りていないことを示していますので、政府がその足りない分を財政出動によって賄うべきでした。しかし、日本政府(特に財務省)は財政赤字を悪として、経済が悪化していても財政出動を抑制してきました。
こういったことが日本経済が低迷している原因なのですが、D・アトキンソンさんは中小企業が多すぎることを日本経済が低迷している原因としています。
注目したいのは、経営者の能力です。思い切り敵をつくる発言をしますが、日本には能力の低い経営者が多すぎます。本来、経営者としてふさわしいレベルに達していない人が経営をするから、人件費を削って価格を下げるという安直なやり方を選んでしまうのです。
そんなレベルの人が経営者になれるのも、中小企業の数が多すぎるからです。日本の企業数は約360万社。つまり日本には360万人分の社長のイスがある。明らかに多すぎで、その気になれば誰でも座れます。
「日本には能力の低い経営者が多すぎます。」とのこと。
20年も続く経済が低迷によって実質賃金が下がり続け、「モノを買いたくても買えない」人がどんどんと増えている状況で、モノを安くするしかない経営者を能力が低いと切り捨ててしまうのはいかがなものでしょうか。
経営者個人の責任ではなく、それを放置し続けた政府を批判はしていますが、「中小企業を減らさなかったこと」が問題ではありません。雇用を減らさずに、中小企業の数を減らしていくという難易度の高い政策を実行しようとしなくても(効果のどこまで出るのかも不明)、政府が新規国債発行によって財政出動し、さまざまな分野に投資すれば自然と日本経済は上向いてきます。
しかしそういった発想を妨げるのが「財政破綻論」です。政府(財務省&マスコミ)はこれ以上財政赤字を拡大してしまっては日本は財政破綻してしまうと20年以上も言い続けてきました。しかし、過去20年間財政赤字が増えていますが財政破綻はしていません。自国通貨建ての国債を発行している日本が財政破綻に陥ることはありえないからです。
それでも彼は「財政破綻論」を信じているから、政府の財政出動という一番簡単かつリスクが低い政策を提言することが出来ず、おかしな政策を提言することになっています。
まとめ
このようにして日本経済が低迷している原因を政府による財政出動が足りなかったことではなく、中小企業の数が多いという、ことにすり替えてしまうのはよくありません。中小企業経営者の能力が低いというのも、それではなぜ日本の中小企業経営者の能力が低いのか、日本が経済成長していたときは能力が高い人が多かったのか、等色々と疑問も生まれてきます。
政府が財政出動により日本経済を立て直してくれることを祈ります。