民間の貯蓄が国債の購入の資金になるという嘘
本日はこちらの記事。
政府債務残高の対GDP比が敗戦直前を超えているが、インフレどころかデフレの危険があるのはなぜだ!という記事。これを書いた方は原田泰(ゆたか)氏。リフレ派だそうです。
インフレにならない理由は財やサービスが買われていないからだと思います。つまり、需要が足りない状態。コロナ禍で需要は激減してしまっています。一方、戦時や戦後はお店や工場といった供給能力が破壊されてしまいました。しかし、戦争により兵器などの需要は常にあり、食料も満足に得られない状況が続き、物の価格がどんどんと跳ね上がっていきました。
戦時、戦後のインフレをお金を刷りすぎたせいと認識している方もいるのですが、お金を刷っただけではインフレにはなりません。お金によって財やサービスが買われることでインフレになるのです。
最後に筆者の貨幣観が間違ってしまっている箇所があったので紹介します。
コロナショック時の政府の対応は、所得を補填(ほてん)することだった。所得の補填は国民も企業も安心させる。政府がもっと国債を発行して支出するしかない。しかし、政府が財政的にこれ以上補填できないと思われれば、国民は心配になる。結果、国民は貯蓄し、銀行を通じて国債の購入になっている。皮肉なことである。しかし、だから財政拡大が可能になる。また、そうしなければ経済はさらに悪化するだろう。
太字部分です。国民の貯蓄が銀行の国債購入の資金になると勘違いしています。私たちの貯蓄と銀行の国債購入の資金は別物です。銀行は国債購入の資金として日銀当座預金を使っています。
ここで重要なのはお金には種類があるということです。私たちの銀行預金と日銀当座預金は全くの別物です。これをごちゃまぜにしてしまうとさまざまないらぬ心配をする羽目になります。
たとえば、よくあるハイパーインフレに関する嘘。
①民間の貯蓄によって国債を消化している
②今は潤沢に資金があるけれどいずれ民間の貯蓄が尽きればハイパーインフレになる!
といったことを言う人もいるそうですが、「民間の貯蓄によって国債を消化している」という前提が異なっていますのでそのようなことは起きません。
しかも現時点で新規国債発行をすれば日本銀行が買い取ることになるでしょうから、民間があれこれ心配する必要も特にありません。
というかこの方は日本銀行製作委員会審議委員を務めていたとのことで、これくらいのことは分かっているはずなのですが。わざと誤った情報を書いているのでしょうか。
現代まで続く主流派経済学の主張が間違ってしまっていたために、それに基づいて行われてきた経済政策も間違っており、20年以上も日本はデフレで苦しんでしまっているわけです。
正しい貨幣観に基づき正しい経済政策が行われることを祈ります。